この恋が叶うなら心臓を捧げてもいいのに
〔詩篇〕
by
柊 アヤ
SMASHWORDS EDITION
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PUBLISHED BY:
柊 アヤon Smashwords
この恋が叶うなら心臓を捧げていいのに
Copyright © 2010 by Aya Hiiragi
『禁忌』
胸に刺さる硝子のような二つの恋は
重ねても濁ることのない
清冽な透明度を誇る真実
万世の規範は 其の存在を許さず
僕の胸の中で砕いても
忘却できない痛みが増すばかり
もし この恋が叶うのなら
この 血だらけの心臓を捧げてもいいのだ と
誰に誓えば
僕は
救われるのだろう…?
『祈りの矢』
深海の幾万里を貫く 意思の矢を放て
弦が弾け 貫手が赤く染まろうとも
月の僅かな光明が 海底の闇に消えようとも
祈りにも似たこの矢は
折れはしない
『アスファルトの囁き』
愛するキミのために
頭を垂れて
我が身を空にさしだし
あのアスファルトまで墜ちてみたらと囁く僕と
もう一人の僕が
戦っている
『暗い深層』
暗い深層で重なる鉱物のように
沈黙を保つ恋は
純度が高いほど 切なくて
傷つく前に 砕け散る
その破片もまた
互いに惹かれあい
原子の粒になるまで 砕け散り
身を滅ぼしたとしても
一つの悔いも残らぬことを
誰も知らない
『聖者の矜持』
聖者は 狭量な尺度で 道理を述べ
自らの矮小を知らずして
心 腐らせる 哀れなナルシスト
僕の弱さも 痛みも 憎しみも
全て 解るフリして
神を 気取る
聖者は 矜持を守る ただそれだけで
僕の救いに 見向きもしない
『忘却の御手』
いつになれば
忘却の神様が その白く嫋な指で 僕の頬を包み込み
優しく 頭蓋ごと 記憶を破壊してくれるのか
もし 千と九十五の夜を経ても 尚
消えない この苦しみが
あの恋と等価であるなら
許しを請う 僕の終焉は
まだ
未来≪さき≫なのだろうか
『冷たい刃』
ただの悪戯だった と
罪の自覚から目を反らす
薄弱なる魂を持つ 若き聖者気取り
いつも 浅はかな救いを演出し 自己欺瞞する
僕たちの想いを弄んだ
弱者を装う育ちそこない
二度と戻らぬものの 儚さを
この冷たい刃で その心臓を貫き
息途絶える刹那に
教えることができたらいいのにと
僕は
神に祈っている
『白い如雨露』
いつか
誰もいない小さな惑星で
君の名前と好きの一言を
大声で叫びたい
あの王子さまみたいに
真っ白な如雨露を持って
ただ一つの花に水をかけることだけに
一生を捧げてもいいから
『湖面』
君は鉛の如く 心臓に沈む
心は 過去に捧げた
風に流される 僕の未来に
希望も 絶望もない
『海に抱かれる』
多分
この苦しみを一生抱えて 生きていくんだと
覚悟を決めてから
僕は淋しくなくなった
この痛みも 僕の一部となって
少しずつ
僕の存在を形成していくのなら
それは 清流の中で流転する岩と同じ
いつか小さな砂粒となって
寛容な海に抱かれる日が待っているのだ